わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
「ま、もともと人間関係薄いみたいだし、本人がどう感じてるかは知らんが、意外に平気そうだぞ」

「うん。入院中も彼の同級生達が来たんだけど、なんかほとんど誰もあんまり気にしてないみたいなんですよね。むしろ笑い話になっちゃってる」

「似た者同士なんだろ。って、なんで俺がお前に説明するんだよ。直接聞けばいいだろうに」

「悪いと思ってますって。だから、お昼奢ってるんじゃないですか」

そう言いながら、一花は箸を置いた。やっぱり、今日は食べきれないや。

「そうじゃなくてさ、なんで遠慮してんのかってことだよ」鬼塚も箸を置く。こちらは大盛りの皿がきれいに空になっている。「お前、ヤツが覚えてなくても、一応彼女だろ?」

「まあ、そうなんですけど。一応……」

遠慮ともちょっと違う、と一花は思う。でも、それをうまく説明はできなかった。

店の外に出ると一花は空を見上げた。よく晴れた秋晴れの空だった。

「ご馳走さん。俺はこのまま外出るから」

「はい、お疲れ様です。あの、いろいろありがとうございます」

「全くだ。さっさと元に戻ってくれないと、こっちも影響ハンパないんだからな」

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