わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
その週末、榛瑠は舘野内家にやって来た。家の中を案内したのは嶋さんだった。屋敷内は嶋さんの管轄だしね。
でも結局、最後の相手をしたのは一花だった。
しょうがないよねえ。わたしの客なわけだし、と思う。
そう、当たり前かもしれないけど、榛瑠は”客“の顔をしていた。
「何か気になったところとかあった?」
応接室で紅茶を飲みながら、一花の問いに榛瑠は穏やかに答えた。
「いえ、残念ながら。でも素敵なお屋敷ですね。手入れが行き届いていて居心地が良さそうな」
一花は複雑な気分になった。まさか榛瑠から居心地がいいなんて言われるなんて。彼は口にはしなかったけど、決してここでの生活が好きだったわけではないと思うのだけど。
「そう……。特に気にいったところある?」
「庭かな。好きですね」
好き、という単語にどきっとする。違う、違う、これは家の話。それにしても、庭なんだ。
「昔から、庭が好きだったよ、あなた。……そうなんだね。変わらないんだ。そういうの」
一花はなんだか、とても嬉しかった。顔がほころんでしまう。それに反して榛瑠は少し困ったような表情をしていた。
「ここに住んでいたんですよね」
「そうよ。8歳から10年間」
「直接の親族でもないのに、何でなのでしょう」
でも結局、最後の相手をしたのは一花だった。
しょうがないよねえ。わたしの客なわけだし、と思う。
そう、当たり前かもしれないけど、榛瑠は”客“の顔をしていた。
「何か気になったところとかあった?」
応接室で紅茶を飲みながら、一花の問いに榛瑠は穏やかに答えた。
「いえ、残念ながら。でも素敵なお屋敷ですね。手入れが行き届いていて居心地が良さそうな」
一花は複雑な気分になった。まさか榛瑠から居心地がいいなんて言われるなんて。彼は口にはしなかったけど、決してここでの生活が好きだったわけではないと思うのだけど。
「そう……。特に気にいったところある?」
「庭かな。好きですね」
好き、という単語にどきっとする。違う、違う、これは家の話。それにしても、庭なんだ。
「昔から、庭が好きだったよ、あなた。……そうなんだね。変わらないんだ。そういうの」
一花はなんだか、とても嬉しかった。顔がほころんでしまう。それに反して榛瑠は少し困ったような表情をしていた。
「ここに住んでいたんですよね」
「そうよ。8歳から10年間」
「直接の親族でもないのに、何でなのでしょう」