わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
その時、ドアが開く音がした。ぎしっと、ベットに人が上がる気配がする。

「お嬢様。終わりました。拗ねるのやめて顔を出しませんか?」

私は布団の中でもぞもぞする。だって、怒ってるし。恥ずかしいし。

と、そっと、榛瑠の片手が布団の中に入ってきて頬を撫でた。

「一花、顔見せて」

一花はのそのそと布団から出て体を起こす。

榛瑠は、ごめんね、と言ってキスをした。

そう、知ってるの。彼は自分のやることさえ終わっちゃえば、私を甘やかしにくる。

わかってて拗ねてるのもどうかと、自分でも思うのだけど、でも、嫌なものは嫌だし。

「拗ねてるなあ」

榛瑠はクスクス笑って私を見る。

「拗ねてもいいと思うの。今日は」

「そうしたければ、どうぞ」

‥‥全然相手にしてくれないんだから。

「私もいつもいつもあなたを最優先にはできませんしね。でもまあ、お陰でこちらから伺う手間は省けたし」

そう言ってまた軽くキスをする。

「一応、会うつもりはあったんだ?」

「そりゃね。だからこそ、さっさと仕事終わらせたかったていうのもある」

そうなのか。

「……ごめんなさい、邪魔して」

「謝ることはないです。予定より早く終わったし。我ながら意外な効果でしたが」

「そうなの?」

「うん、あなたが一人で拗ねて待ってると思うとね」

「……ごめん」

「そうじゃなくて」榛瑠はいたずらっぽい笑顔を浮かべる。「さっさと終わらせないと俺の我慢の限界超えるでしょ?」

「え?」

榛瑠はふいに一花を引き寄せると抱きしめた。そのまま長くて深いキスをされる。

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