わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
一花は首を傾げる。誰のこと?と思いながら一人の影が心に浮かぶ。

「知らないんですか?四条課長ですよ。我が社の最高級でしょ」

「はあ……」

いろいろ呼び名をつけるなあ、と一花は感心する。って、榛瑠がなに?

「課長、結局、美園さんとくっついちゃったらしいですよ」

「まさか」

彼は今、あんなに他人に慎重になっているのに。

「本当ですって。社内の子が夜に繁華街を腕組んで歩く二人を見たそうですもん。それも結構遅い時間だったらしくて。そんな時間に何にもない男女が腕組んで歩いたりしないでしょう?」

「……へえ」

「まったく、誰が美園さんなんかを海外まで迎えに送り込んだのやら。どう考えてもそこですもんね。余計なことしてくれましたよねえ」

それ、私。一花はそう言う代わりに曖昧な返事を返して、視線をデスクのパソコンに向けた。

何だか、頭がしっかり働いてくれない。榛瑠と美園さん?なんで?

キーボードを機械的に打ちながら、一花の頭の中に以前、美園が言った言葉が浮かんだ。

ーー後で後悔しなよーー

私は、後悔しないといけないのだろうか?
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