わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
やがて唇が離されて、でも抱きしめられたまま彼の声を聞く。

「どうしようかな」

「な、なに?」

「このままここですごすのもいいけど、コーヒー飲みたいなあって」

「あ、私も飲みたい」

さすがにここでずっとってのはちょっと。とりあえずベットから降りよう。そう思うのに、榛瑠が離してくれない。

「離して?」

嬉しいのだけど、動けないし。

「うん」

そう言いながら、でも、榛瑠は離れずに私を抱きしめていたと思ったら、そのまま私の膝に頭を乗せて横になってしまった。

「ちょ、ちょっと榛瑠」

「だめだ、限界」

「え⁈」

「ねむい……」

「え?」

「ここ2日、ろくに寝てない」

「徹夜したの? しない主義じゃなかったっけ?」

「そうですけど、言ってられなくて……。ごめん、一時間したら起こしてくれていいから……」

言っている間に、榛瑠は眠ってしまった。

膝枕状態の私も動けない。いいけど。

一花は金色の髪をそっと撫でた。

榛瑠、疲れた顔をしているなあ。

そりゃ、そうだよね。うちの会社とアメリカの自分の会社掛け持ちなんて……。出張があるから余計にスケジュールがタイトになったのかもしれない。

私は何もしてあげられないからモヤモヤしてしまう。彼のためにできること、ってあるかしら?

いろいろ考えてみるも何も思いつかない。基本、榛瑠は私の助けなんて必要としてないっていうの、わかってるし。あーあ、彼女としてどうなのよ?私!

一花はとりあえず、思いついた唯一の事ーー彼を起こさないように掛け布団をかけてあげるーーをしたのだった。



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