わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
「紅茶も?」

「うん、よく出してくれたのと同じ。おいしい」

「そう。……プリンも同じ?」

「え?」実は、少しだけ違った。それを伝えてもいいのかな?「えっと、本当は少し違った。甘い、かな?でも、作り方の違いとかは私はわからないし、充分おいしかったよ」

「そうですか、やっぱり」

「やっぱり?」

「実は古いレシピが出てきてそのまま作ったんです。何か違う感じもあったんですけど、とりあえず忠実に。たぶん、あなた好みにいつもは変えていたんでしょうね。紅茶も自分はそんなに飲まない割に茶葉が減っていたので、あなたが来た時に使っていたのだろうと出してみました」

「なんか、推理してるみたい」

榛瑠は微笑んだ。

「そうして隙間を埋めないとね」

「そっか……」

そこで会話が途切れた。と、榛瑠が近くに来てポットに残っていた紅茶を注いでくれた。

一花はお礼を言って紅茶を飲む。変わらず美味しい。榛瑠はコーヒーの入ったカップを持って、一花の斜め向かいのソファに座った。部屋も彼も変わらない、でも、決定的に違う。

「それにしてもあなたとここでどうして過ごしていたんでしょうね?自分で言うのもなんですが、女性が喜びそうなものなんて一つもないですよ、この家」

一花は笑った。

「あなたの家だもの。余分なものは置かない主義でしょ?それに、榛瑠は忙しかったから、そんなには会ったりしてなかったし」

でも、言われてみれば何してたかな。

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