わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
「あの、私も聞いていい?」

「なんでしょう?」

「あの、美園さんとはどんな関係なの?」

「気になります?」

相変わらず笑顔で言う。こういう意地悪なところは変わらないんだから。

それでも、なんだか今は聞けそうだった。きっと、プリンのせいだ。ここに来るまでよりずっと、心が軽い。

「……気になります」

「本当に言うようなことはないんですよ。見たままです」

よく、わかりませんが。

「気になるってわりに、遠慮がちですよね?一花さんは」

「遠慮っていうか、戸惑ってるんです」

「何に?」

「あなたにです。というか、あなたの私の扱い方に」

「例えば?」

「ぜんぶ!」 一花は強く言葉が出た。「全部です!呼び方から話し方から扱い方から!」

まって、落ち着け私。一花は一呼吸置いて付け足した。

「だって、私のことを知らない榛瑠なんて、気づいた時には存在しなかったのよ?」

「そっか」

「そうよ。初めまして、なんて言ったことないもん」

榛瑠は可笑しそうにクスクス笑った。何がおかしいのか全然わからないけど。

「あ、でも、あなたがうちに来た時のことははっきり覚えているの」

「ほんとに?だいぶ小さかったでしょう、貴方」

「うん、5歳だった。でも、覚えている。うん、覚えているよ」

とても綺麗な天使みたいな少年がある日突然、家にやってきたのだ。そう、ちゃんと覚えている。

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