わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
鬼塚にどう言おうかと思っているうちに篠山が戻って来た。

「ねえ、一花先輩、週末に合コン行きませんか?」

「は?」

いきなりの話に一花は問い直した。

「メンバーあと一人欲しいんです。お願いします。一花さんなら他の子も賛成だって」

「え、いや、私は……」

「行ってこいよ」

頭の上から太い声が降ってきた。

「え?鬼塚さん?」

「行け。どうせ暇だろうが。お前もいつもいつもクソ真面目でなくていいんだぞ」

「え、でも、そんな気には」

「そうですよ、普通に楽しんで飲むだけですから。美味しいお店予約してあるし、行きましょ」

断りきれない私を見て、篠山さんが時間などを言ってくる。ちょ、ちょっと、待ってよ〜。

「ま、楽しんでこいや。あ、佐藤、さっきの件、よろしくな」

鬼塚が離れたところにいた佐藤に声を大きくして言った。

パソコンを起動しようとしていた佐藤が手を振る。

その手に持った棒付きキャンデーがぶんぶんと揺れていた。
< 66 / 172 >

この作品をシェア

pagetop