わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
そうしているうちに店員がビールを持ってくる。彼はそれを受け取ると美味しそうに飲んだ。

「あー疲れた。バイトしてきたんですよ、ほかの……。あれ、一花さん、もしかして僕のことわかってない?」

「え?」

誰?こんな年下の男の子の知り合いなんていないよ?

「え、マジ?うわっ、ショックだなあ」

でも、言われてみればどっかで見たような……。どこだっけ?

一花はいろいろ考えてみる。大学の後輩でもないし、他に出会いそうな場所は、仕事?バイト……。

「……あ!ノコさんところのお店のバイトさんだ!」

「あたり!あーよかった。思い出してもらえて」

「ごめんね。服装違うから、わからなかった」

彼は笑った。そうだ、バイトでウェイターやっている子だ。須賀くん、だっけ。

お店では白シャツに黒のエプロン姿だからわからなかった。今はパーカーにジーンズというカジュアルな格好だ。

「え、でもなんで?」

「幹事が僕の大学の先輩なんです。今日の相手の会社名聞いて、まさか、と思いましたけど、本当に会えるなんてめちゃくちゃびっくりです」

そう言って須賀は一花の隣で笑う。

「ほんとだねえ」

一花はグラスを口にしながら改めて須賀を見た。
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