わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
「いいですけど」榛瑠は一花の顎に手をやって軽く顔を上に向けさせた。「可愛いし」

そう言って彼女の頬についた生クリームを舐めた。

え、え⁈

一花がうろたえるのを無視してそのまま唇を奪う。

「ま、まって。クリーム、榛瑠についちゃうよ!」

「だったら、動かない。黙って」

そう言って手を上げたままの一花に深くキスをする。一花は身動きできずされるままになる。

ちょっと、待ってってば。手、下げれないじゃない。ねえ、もう、好き勝手しすぎ!

「ねえ、……ちょっ……、ついちゃう、から!」

隙をぬって切れ切れに一花が言うと、やっと榛瑠は彼女を離した。

「もう!」

そう言って一花はわざと彼に生クリームのついた手を近づける。

榛瑠はその一花の手首をつかむと、指についたクリームを舐めた。

な、なめないで! 流し目でこっち見ないで! 心臓に悪いじゃない!

思わず目をつぶった一花の手を不意にぱっと離すと、榛瑠はいつもの冷静な声で言った。

「後はやるので、あなたは座っててください。あ、手は洗ってね」

「…あ、洗うわよ、もちろん」

なんなのよ、この変わり身の早さ。いつものことながら……。こっちばっかりドキドキさせて。

ブツブツ言いながらソファーに座って待っていると、ほどなく榛瑠がデザートの皿と紅茶を運んできた。
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