わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
一花は自分が須賀と手をつないだままなことに気づいてほどこうとした。が、強い力で握り返されてほどけない。

「デートですか?」

須賀の屈託のない問いに榛瑠は曖昧に答えた。

「そういうわけではないです。それより一花さん酔ってます?大丈夫ですか?」

「大丈夫です。そんなに飲んでませんし」

美園は笑ったようだった。この人、お酒強そうだよね。

一花は何故か二人がすごく大人のカップルに見えて、引き換えに自分がひどく子供っぽく思えて、なんとも言えない気分になった。

「本当に?なんなら車でお送りしましょうか?」

榛瑠は心配顔で聞いてくる。親切だかなんだか知らないが、うんと言うわけないのにな。

一花が断る前に先に美園が言った。

「えー嫌だ。この後一緒に過ごす約束じゃん」

一花はむかっとしたがなるべく冷静に返した。

「本当に大丈夫です。心配してもらわなくても」

「結構、大丈夫に見えてないんですよ、一花さん」隣で須賀が明るい声でいった。「でも、僕が責任持って送るから大丈夫です!」

榛瑠は一花を見る。
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