わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
「ほんとに平気。高橋さんに途中から迎えに来てもらうし。あなたが心配することじゃないわ」

「信用してほしいなあ、四条さん」

榛瑠が改めて須賀を見た。

「失礼ですが、以前に会ったことが?」

「ノコさんのお店にバイトに来てる須賀さん。この前はお休みでいなかったけど……。以前はあなたも何度か会ってるわ」

須賀の代わりに一花が説明する。

「そうでしたか。失礼しました」

「あ、事情知ってるんで気にしないでください。で、僕を信用して下さい。大丈夫っすから」

「……わかりました。では、お嬢様をよろしくお願いします」

そう言って榛瑠たちは立ち去った。なんだろうな、あれ。お嬢様は大事にっていうのだけ彼の中にいきてでもいるのかしら。……迷惑。中途半端な優しさは迷惑だわ。

そう思いながらもその背中を追ったままの一花に美園がちらっと視線を向ける。その顔は笑っているようだった。

一花は視線を背けると、まだ握ったままの須賀の手をほどいて歩き出した。

「あ、待ってくださいよ、一花さん」

「須賀くん。ごめんね。嫌な思いさせて。でもおかげで酔いも覚めたし、もう平気。ありがとう」

「え、ダメですよ、送ります。今、約束したばっかだし。僕だって」

親切で言ってくれているとは思う。でも、正直、一人にして欲しかった。

一花は須賀に大丈夫だからと言ってそのまま振り返らず歩いた。
< 74 / 172 >

この作品をシェア

pagetop