わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
冬空
1.
榛瑠はいれたてのブッラクコーヒーを片手に窓辺に立った。
自室の高層階の窓から明けたばかりの空を望む。今日はいい天気になりそうだった。
眼下には街が広がっている。この景色を日常的に手に入れられるのは、限られた人間だろう。
だが、何の感動もない。美しくないな、と思う。
空の青がはっきりしてくる。
苦いコーヒーを口にする。
「つまらないな……」
榛瑠は呟いた。
いつもの通り、残業を少々して榛瑠は帰宅した。
夜はすっかり寒く、その分夜空は澄む季節だったが、この街では相変わらず空は濁っている。
エントランスを抜けて自分の部屋の前までいくと、そこに人影があった。
一花だ。
なんの用だろう、とは思ったが嫌な気分にはならなかった。
「こんばんは。どうかされましたか?」
なるべく穏やかに聞く。
「ごめんなさい。家まで来て。渡したいものがあって」
そう言って彼女はカバンの中を探す。気のせいか頬が白っぽい。いったいいつからいたのだろう。終業後すぐからだとしたら結構時間が経っている。外ほどではないがここも充分冷えている。
「とりあえず、中に入りませんか?」
一花は首を振った。まあ、そうだろうが……。
「すぐなの。会社では渡しづらくて……。」
自室の高層階の窓から明けたばかりの空を望む。今日はいい天気になりそうだった。
眼下には街が広がっている。この景色を日常的に手に入れられるのは、限られた人間だろう。
だが、何の感動もない。美しくないな、と思う。
空の青がはっきりしてくる。
苦いコーヒーを口にする。
「つまらないな……」
榛瑠は呟いた。
いつもの通り、残業を少々して榛瑠は帰宅した。
夜はすっかり寒く、その分夜空は澄む季節だったが、この街では相変わらず空は濁っている。
エントランスを抜けて自分の部屋の前までいくと、そこに人影があった。
一花だ。
なんの用だろう、とは思ったが嫌な気分にはならなかった。
「こんばんは。どうかされましたか?」
なるべく穏やかに聞く。
「ごめんなさい。家まで来て。渡したいものがあって」
そう言って彼女はカバンの中を探す。気のせいか頬が白っぽい。いったいいつからいたのだろう。終業後すぐからだとしたら結構時間が経っている。外ほどではないがここも充分冷えている。
「とりあえず、中に入りませんか?」
一花は首を振った。まあ、そうだろうが……。
「すぐなの。会社では渡しづらくて……。」