わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
彼女に告げた、区切りをつけたいという判断を後悔はしていない。

自分は思い出せないし、現在、彼女を愛してはいない。

この先はわからないが、いつかを待ってこのまま曖昧なのは良い選択とは思えなかった。

彼女のためでもあったが、何より自分が耐えられそうにない。

本当のところ、誰にもわからないところで榛瑠はイライラしていた。わからないということはひどく不快だった。

何より、停滞感がイライラさせる。

会社での仕事はそれなりに面白みがあったが、自宅での自分の仕事の方がもっと面白い。なぜ、日本に来る選択を過去の自分がしたのか当初は全くわからなかった。

やがて一花のためだと思い当たった。

でも、今の自分がしたいこととは違う。その停滞がイライラさせる。一言で言えば、退屈でしようがなかった。

退屈で、鈍くて、霧の中にいるような。うんざりする。

彼女との関係に一度距離を取ることにおいては、二つ心配があった。

一つは自分が思い出した場合。その時、吹子ではないが自分に殴られるかもしれない。

もう一つ。もっと真剣に考えたのは、一花がいつまでも引きずってしまう可能性だ。

彼女に落ち度はない。今の自分の在り方でいいと一花が言うのなら、以前のように愛せなくてもいいのならば、そばにいるのもありかなと思った。

だが、思った通り一花は拒んだ。

それなら、お互い違う道を歩んだ方がいいだろう?
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