わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
さっきの失敗が嘘のように、皿にはプリンとフルーツとクリームが美味しそうに盛り付けられていた。

「いただきます」

「どうぞ」

榛瑠はコーヒーだけ持って一花の隣に座る。

「おいしいですか?」

「うん」

一花はニコニコして言った。

「それは良かった」

そう言って榛瑠はブラックコーヒーを口にする。

「食べてみる?」

そう言って一花はひとさじ差し出す。榛瑠はそれを食べると言った。

「甘いな」

榛瑠はよく一花にスイーツを作ってくれる。昔からだ。でも、自分自身はほとんど食べないのよね。

「甘さ控えめって書いてあったんですけど」

「そりゃ、あなたが作ってくれるものよりは甘いよ。でも美味しいよ」

「別に、お嬢様を太らせたいわけじゃないので。でも、こんなものなのかな」

「太らせって、もうっ」

一花は頬膨らませた。っていうか、太ってきてるのバレてる? やばっ。

「もう一口あげる。はい」

一花はスプーンに山盛り掬うと、榛瑠の口元に持っていく。

そして、彼に口元にクリームが消えていくのを見てドキドキしている自分に気づく。なんか、あぶない人みたい、わたし。

「もういい」

そう言って榛瑠はコーヒーを飲んだ。わずかにしかめっ面をしている。一花は笑ってしまった。

「笑ってますけど、ね。今度から作るときにはめちゃくちゃ甘くしましょうか?」

「いい。大丈夫! 」

笑いながら言う一花に榛瑠が顔を近づける。

「違う意味で甘くするのなら、もうちょっと得意ですよ?」

え?
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