わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
暑さ、炎。人の怒鳴り声。それから大きな破壊音、光。そして。

叫び声、だ。自分の。音はない。でも、叫んでいる自分。

何を叫んでた?誰に、何を?……誰の名を?

そう、名前だ。誰かの。

誰?

榛瑠は頭の奥に鈍痛を感じて足を止めて目を閉じた。車が行き過ぎる。

やがてゆっくり目を開けると歩き出した。

何にしろ、何を失くしたのか、何をこれから得られるのか、もう少し考えてみないとな。

そんなことを考えていた。




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