わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
「大体あんたが何できるって言うのよ。笑わせること言ってんじゃないわ。何にもできないお嬢さんのくせして。何にも知らないくせに」

「何もかも知らないってわけじゃないわ」

こちらはもう少し抑えた声。よく知っている声だ。

書架に隠れて姿は見えない。

「知ってるつもりでしょ〜。大概飽きられてたわよ。あいつを楽しませることなんて全然できないじゃん。ワンナイトの女のほうがマシじゃん?」

「勝手な作り話しないで」

「なんで作り話?ほんっとお嬢さんはおっとりしてていいわあ」

うわ、きっつと佐藤が姿を探しながら思った時、バシッと平手打ちらしい音がひびいた。

やばっと思った瞬間もう一度同じような、でも、もっと大きな音がする。

やばいでしょ!勅使川原さんどこ⁉︎

部屋の最奥に二人はいた。

「何してるの!仕事中だよ!」

「関係ないし」

と言ったのは美園だった。

その前で一花が立っている。

「関係ないかもしれないけど!喧嘩しちゃダメでしょ?」

美園がバカにしたような視線を佐藤に向ける。佐藤は一瞬たじろいだ。

そりゃ、ちょっと言い方変だったかもしれないけど、それにしてもこの人の目力怖いよ!
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