わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
そう思う。でも、頰を見ると赤くなっていて、そうは言ってもなあ、と思う。
「ちょっとだけここで待てる?」
そう言って佐藤はいったん部屋を出ると、ハンカチを洗面所で濡らしてすぐ戻った。
それを一花に、使ってないからきれいだから、と言って渡した。
一花は驚いたようだったが、お礼を言って濡れたハンカチを受け取ると頬に当てた。
「……腹は立つんですけど、言ってることは間違ってないなって思うんです。だから……」
そう、一花がつぶやくように言った。
佐藤は美園の言ってたことを思い返す。なんとなく文脈はわかる。
「でも、そうかなあ。美園さんの言ってたことだって、所詮は一面だと思うけどなあ。本人じゃないしね。確認しようがないのがつらいよね」
うん、と頷いた一花が一息遅れて驚いた視線を佐藤に向ける。佐藤は苦笑した。
「あれでしょ?四条さんのことでしょ?」
「え、どうして⁈ 」
「美園さんが絡むとしたら他にないし、それに、課長と勅使川原さんって付き合ってるんだろうなとは思っていたんだ」
「隠せているつもりだったのに」
「うん、まあ、そんなに気づかれてはいないと思うけど。僕は見る機会多かったし」
まだ訝しげな一花に佐藤は続けた。
「元々さ、鬼塚さんと三人でよく一緒にいるところを見かけてたんだけど、鬼塚さんつながりなんだろうなって思っていたんだよね。でも、いつだったかな。エレベーターで課長とすれ違った時があったんだよ。彼が降りてきて僕が乗る方だったんだけど、すれ違う時、なんていうか課長が楽しそうだったから、珍しいなと思ったら中に勅使川原さんが一人でいてさ。そしたらこっちは妙にふてくされてて」佐藤は思い出し笑いをする。「それで、もしかしたらと思い始めてさ」
「ちょっとだけここで待てる?」
そう言って佐藤はいったん部屋を出ると、ハンカチを洗面所で濡らしてすぐ戻った。
それを一花に、使ってないからきれいだから、と言って渡した。
一花は驚いたようだったが、お礼を言って濡れたハンカチを受け取ると頬に当てた。
「……腹は立つんですけど、言ってることは間違ってないなって思うんです。だから……」
そう、一花がつぶやくように言った。
佐藤は美園の言ってたことを思い返す。なんとなく文脈はわかる。
「でも、そうかなあ。美園さんの言ってたことだって、所詮は一面だと思うけどなあ。本人じゃないしね。確認しようがないのがつらいよね」
うん、と頷いた一花が一息遅れて驚いた視線を佐藤に向ける。佐藤は苦笑した。
「あれでしょ?四条さんのことでしょ?」
「え、どうして⁈ 」
「美園さんが絡むとしたら他にないし、それに、課長と勅使川原さんって付き合ってるんだろうなとは思っていたんだ」
「隠せているつもりだったのに」
「うん、まあ、そんなに気づかれてはいないと思うけど。僕は見る機会多かったし」
まだ訝しげな一花に佐藤は続けた。
「元々さ、鬼塚さんと三人でよく一緒にいるところを見かけてたんだけど、鬼塚さんつながりなんだろうなって思っていたんだよね。でも、いつだったかな。エレベーターで課長とすれ違った時があったんだよ。彼が降りてきて僕が乗る方だったんだけど、すれ違う時、なんていうか課長が楽しそうだったから、珍しいなと思ったら中に勅使川原さんが一人でいてさ。そしたらこっちは妙にふてくされてて」佐藤は思い出し笑いをする。「それで、もしかしたらと思い始めてさ」