わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
「佐藤さん、鋭すぎ……」

「いや、これって鋭いって話じゃないよ。たまたま目撃しただけで」

一花が黙って首を振って下を向く。

「おかしいって思いましたよね?以前からの知り合いです。社内恋愛というわけではなくて……」

その様子を見て佐藤は言った。

「いや、別に。びっくりはしたけど、正直言うと。でもさ、課長がどう思っていたかなんて僕にはわからないわけで、人それぞれじゃないのかな」

一花は下を向いたまま頷いた。

「……じゃあ、もう行くね。勅使川原さんはゆっくり戻りな。なにか言われたら僕から仕事頼まれたって言っていいから」

謝罪とお礼の言葉を一花が言う。

「いいよ。あとさ、僕が口挟む事でもないけど、課長、君といる時ってなんとなく楽しそうに見えたよ。それに美園さんはあんなこと言ってたけど」佐藤は一呼吸置いてもう一度自分の中で反芻すると、確信をもって言った。「四条さんが選択を間違うってことあるかな。他人がなんと言おうと気にしない人だよね?僕はそれで仕事上で板挟みになったことすらあるのに。自分の彼女だよ?」

一花が佐藤に視線を動かして小さく笑った。

「ごめんなさい。佐藤主任」

「ほんとだよね。後からフォローはしてもらってるからいいけど。鬼塚さんといいさ、結構困った人たちだと思うよ」

そうなのだ。事務的な作業を実行していく身にもなって欲しいんだよなあ。それでも、あの二人とよく関わるようになって、会社に来るのがずっと楽しくなった。

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