わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
佐藤は一花を残して資料室を後にすると、上階の秘書課へ向かった。
四条課長の記憶は戻らないのだろうか。一花さんもかわいそうに。
階段を使って上階に上がると、人の声が聞こえた。
あれ?鬼塚さんか?
そう思って佐藤はオフィスではなく声のした方へ向かう。階段から続く廊下の奥、倉庫のある行き止まっているところの方だ。
佐藤は角を曲がろうとして足を止めた。正確には鬼塚の声に足を止めさせられた。
「お前さ、今なんといった?」
低い声。
ちょっと、待てよ。鬼塚さん、怒ってるのか?なんだ?
当事者でもないのに佐藤は恐る恐る陰から覗き込む。
鬼塚が壁に向かう形で立っている。その向こうにいるのは、四条だった。
うっわ。なんなんだよ。
四条は「別に」とか言ったようだった。「あ?」とか言って鬼塚が睨みつけている。
佐藤からはその横顔が見えるだけだったが、すぐ顔を引っ込めた。
こっえ〜。鬼塚さんガチ怖いよ。なんなんだよ。っていうか、あんな怖い人を目の前にして、なんで四条さんもあんなに余裕なんだ?おかしいだろ?
鬼塚の陰からちらっと見えた四条は微笑すらしているように見えた。
隠れている佐藤の耳に、壁を叩くような音が届いた。
⁉︎
佐藤はまたビクつきながら陰から覗き込む。すると、鬼塚の右腕が四条の顔のすぐ脇の壁に伸ばされていた。
四条課長の記憶は戻らないのだろうか。一花さんもかわいそうに。
階段を使って上階に上がると、人の声が聞こえた。
あれ?鬼塚さんか?
そう思って佐藤はオフィスではなく声のした方へ向かう。階段から続く廊下の奥、倉庫のある行き止まっているところの方だ。
佐藤は角を曲がろうとして足を止めた。正確には鬼塚の声に足を止めさせられた。
「お前さ、今なんといった?」
低い声。
ちょっと、待てよ。鬼塚さん、怒ってるのか?なんだ?
当事者でもないのに佐藤は恐る恐る陰から覗き込む。
鬼塚が壁に向かう形で立っている。その向こうにいるのは、四条だった。
うっわ。なんなんだよ。
四条は「別に」とか言ったようだった。「あ?」とか言って鬼塚が睨みつけている。
佐藤からはその横顔が見えるだけだったが、すぐ顔を引っ込めた。
こっえ〜。鬼塚さんガチ怖いよ。なんなんだよ。っていうか、あんな怖い人を目の前にして、なんで四条さんもあんなに余裕なんだ?おかしいだろ?
鬼塚の陰からちらっと見えた四条は微笑すらしているように見えた。
隠れている佐藤の耳に、壁を叩くような音が届いた。
⁉︎
佐藤はまたビクつきながら陰から覗き込む。すると、鬼塚の右腕が四条の顔のすぐ脇の壁に伸ばされていた。