わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
挨拶を返しつつ、一花は視線を窓の外に戻した。
もう関係ないのだと、自分に言い聞かせる。毎日、言い聞かせ続ければいつかは本当になるだろう。
一花と榛瑠を残して月子は一礼して立ち去り、榛瑠も一花の後ろを通って歩き去った。
その先の廊下の奥には図書室があり、その手前に子供の頃彼が使っていた部屋がある。なぜだか、嶋さんは住人がいなくなった後もそのままにしていた。
やがて扉が開く音がもう一度して足音がする。一花はそちらを見なかった。
「ありがとうございました。終わりました」
「……何か大切そうなものでもあった?」
後ろ姿を見せたまま聞いてみる。
「いえ、数冊の本ぐらいです。後はガラクタがいくつか」
「そう‥‥」
一花は窓の外を見る。風が吹いている。風は見えないのに、吹いているのはわかる。
と、すぐ背後に気配を感じた。え?と思う間も無く、左頬に指先が触れた。
なにっ⁈
一花は体の奥からゾクッとしたものを感じながら後ろを振り返った。
「な、なに⁈」
目の前に指先が、その人の息遣いがあった。
「もう、痛くないですか?大丈夫?」
ああ、美園さんにひっぱかれたところ……。
「何日も前よ。平気に決まってるでしょ」
もう関係ないのだと、自分に言い聞かせる。毎日、言い聞かせ続ければいつかは本当になるだろう。
一花と榛瑠を残して月子は一礼して立ち去り、榛瑠も一花の後ろを通って歩き去った。
その先の廊下の奥には図書室があり、その手前に子供の頃彼が使っていた部屋がある。なぜだか、嶋さんは住人がいなくなった後もそのままにしていた。
やがて扉が開く音がもう一度して足音がする。一花はそちらを見なかった。
「ありがとうございました。終わりました」
「……何か大切そうなものでもあった?」
後ろ姿を見せたまま聞いてみる。
「いえ、数冊の本ぐらいです。後はガラクタがいくつか」
「そう‥‥」
一花は窓の外を見る。風が吹いている。風は見えないのに、吹いているのはわかる。
と、すぐ背後に気配を感じた。え?と思う間も無く、左頬に指先が触れた。
なにっ⁈
一花は体の奥からゾクッとしたものを感じながら後ろを振り返った。
「な、なに⁈」
目の前に指先が、その人の息遣いがあった。
「もう、痛くないですか?大丈夫?」
ああ、美園さんにひっぱかれたところ……。
「何日も前よ。平気に決まってるでしょ」