薔薇の花束
「超緊張した。めちゃくちゃ恥ずかしかった」
その晩、私が喜んでいると信じて疑わない彼は、
『誕生日おめでとう』の後に、はにかむ声で話し続ける
「そう、ありがとう」
そっけなく礼を言う私の声の冷たさにも気づく様子がなく、心は一段と冷めていく
青山の花屋さんで若い女性店員になかなか言い出せなかったとか
伝票を書く間、恥ずかしくて顔が赤いのを笑われたとか
おそらくこれが恋人としての最後の誕生日プレゼントだから
私から初めて具体的に一世一代のお願いをしたのに
彼に思われている、分かってくれてると信じていた気持ちにギシッと大きなひびが入った