きみと手を繋いで眠りたい




「奈子、これ友紀くんに持っていってくれない?」


その日の夜。お母さんがランチボックスを手渡してきた。

透明のボックスには甘辛に味付けしたきんぴらごぼうが詰められていた。それは友紀の大好物だ。


「今日スーパーでごぼうが安かったからいっぱい買ってきたのよ。まだ温かいから冷めない内にお願いね」

「お、お母さんが自分で行ってよ」

「私はまだ晩ごはんの途中だもの。あんた暇でしょ?さっきからスマホばっかり気にしてソファーに座ってるだけじゃない」


たしかに私はさっきからスマホとにらめっこをしている。

いつもなら先輩とやり取りするラインに跳び跳ねて喜んでるのに、今は先輩からの返事は返さずに、友紀になんて送ろうか考えてる。  


いっそのこと、変なスタンプとか押しちゃう?

でもなんだかあのことをなかったようにしてる気がしてモヤモヤするし……。


「ほら、早く行ってきて!」

私はお母さんに追い出されるようにして友紀の家に向かった。


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