きみと手を繋いで眠りたい
こんなにも足取りが重いのは初めてだ。普段は小走りで行くのに、私はゆっくりと友紀と話す内容をシミュレーションしてる。
いつもはズカズカと家に上がってしまうのに、友紀の部屋に突撃しにいく勇気がない私はそっとインターホンを押した。
……ピンポーン。
できれば友紀のお母さんが出てくれたらいいなと思いつつ。反応を待ったけれど、誰も出てこない。
よく見ると家の電気は付いてないし、友紀の部屋も真っ暗だから誰もいないのかもしれない。
珍しい……。友紀は放課後に遊びにいくタイプじゃないし、私が家にいく時はいつも部屋にいるのに。
どこに行ったんだろう。
漫画の新刊を買いに本屋?それとも駅前のゲーセン?
ぐるぐると考えていると、ザッと背後からローファーを擦る音がした。
「なにしてんだよ」
そこには制服姿の友紀がいた。
「あ、えっと、お母さんがきんぴらごぼう持っていけって」
自然と言葉がたどたどしくなってしまった。私、今までどうやって友紀と話してたっけ?
あの日のことが、あの日の顔が、あの日の感触が全部鮮明に焼き付いていて、顔が熱くなる。
「ふーん。じゃあ、おばさんにお礼言っといて」
友紀は私が持っていたランチボックスをひょいっと奪っていった。
なんだか友紀は普通。普通すぎて、怖いくらい。