きみと手を繋いで眠りたい
*幼なじみと恋*



「奈子ちゃん」

次の日。もちろん友紀とは別々に登校して、その途中で前澤先輩と会った。


「……あ、おはようございます」

「なんか今電柱にぶつかりそうになってなかった?」


昨日から考えてる友紀への答えはまだ出ていない。 

だって15年間幼なじみだったんだよ。家族だって思ってたんだよ。

なのに、弟扱いしてた友紀が急に男みたいになって。見つめられるとドキドキしてしまうなんて、どうかしてる。


「なにか悩み事?俺でよかったら相談に乗るよ?」


先輩はいつでも優しい。

歩く歩幅も私に合わせてくれるし、身長の低い私を気遣っていつも前のめりに話してくれる。

それが嬉しくて、いつも胸がきゅんとなっていたのに、今はそうならない。やっぱり頭は友紀のことばかり。



「……先輩はどうやって彼女さんと結ばれたんですか?」

気づくと私はそんなことを聞いていた。すると、先輩は恥ずかしそうに眉を下げる。


「実は俺たち幼なじみで」

「え!?」

周りの人たちが振り返るくらい過剰に反応してしまった。


「小さい頃から一緒だから家族みたいで俺は彼女のことを妹みたいにしか思ってなかったんだ」


……まさか先輩も私と同じような立場だったなんて知らなかった。


「でも、高校を卒業したあとに彼女は海外に行くんだ。パティシエの勉強で二年」 

「そうなんですか?」 


「ずっと一緒にいたから離れることなんて想像できなくて。そしたらどんどん気持ちが妹としてじゃなく、ひとりの女の子として大切だったんだって気づいたんだよ」


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