きみと手を繋いで眠りたい
「とりあえず学校面倒くさいから、このままどっかに行かない?」
友紀はそう言いながら、私の手を握ってきた。
そういえば、友紀と手を繋いだのは何年ぶりだろう。
小さい頃行った薄暗い水族館で繋いだ時、友紀の手は私と同じくらいで、背丈も変わらなかったのに……。
今はなにもかもが大きくて、友紀はもう家族じゃなくて、ひとりの男の子。
「手繋ぐのって、なんか恥ずかしいね」
外だから?それとも繋いでいるのが友紀だから?
「奈子がはぐれないように、これからも繋ぐよ」
――『なあ、知ってる?らっこははぐれないように手を繋いで寝るんだよ』
得意気に語っていた小さな友紀はもういないけど、あの頃のことを同じように大切に覚えていてくれたことが嬉しい。
その瞬間、胸がぎゅっとなって、幼なじみじゃなくなっていく心のタイマーが速いスピードで動いていくのを――。
私はたしかに感じていた。
【きみと手を繋いで眠りたい END】