きみと手を繋いで眠りたい



小さい頃は私と食べる量が変わらなかった友紀も成長とともに私の倍は食べるようになって、一応友紀の満腹メーターは把握してるつもり。

もちろん好き嫌いも全部知ってるから、チャーハンにニンジンは入れてない。


「お前って、案外いい嫁になりそうだよな」


案外は余計だけど、小中と将来の夢にはベタだけど〝お嫁さん〟と書いた。

早く主婦になりたいとかじゃなくて、単純に綺麗なウェディングドレスを着て、海が見えるチャペルで結婚式を挙げたいという願望から。


「旦那さんは先輩がいいな」


先輩は精悍な顔立ちをしてるから絶対にタキシードが似合う。蝶ネクタイをして胸元に白い薔薇なんて付けたらどうだろう。

いい。すっごくいい。想像しただけで顔が緩む。
   


「寝言は寝てる時に言えよ」

「いいでしょ。夢見たって」


そう、夢を描くのはタダだし、そういう未来があるかもしれないって妄想したって別に……。



「どうせライブ、彼女と行くんだろ、先輩」


そんな私の気持ちを打ち崩すかのように、友紀は一気に夢から覚めることを言う。

友紀に気遣いは求めてないけど、これはわざとというか、悪意しかない。


「食欲なくなるからやめてくれないかな」 

「美人だよな、先輩の彼女」

「………」

「俺の友達みんな言ってるし。あんな美人と付き合えて羨ましいって」
 

……バンッ! 

私は友紀の言葉に耐えられずに机を叩いた。



「ヒステリック」

黙々とチャーハンを食べ続ける友紀がぼそりと言う。


もう美味しく食べられる雰囲気でもないし友紀にもムカついたから、私は「帰る」と言って、そのまま家を出た。


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