約束の白いバラ
「俺の名前は五宮 紫音だ」
そう言ってニヤリと笑った途端に、男達は弾かれたように飛び退いた。私の腕を掴んでいた男も手を離す。たたらを踏んで慌てて体制を立て直す。
「五宮ってあの…!!?おい、逃げろ!!!」
早く行け、逃げろ、と男達は口々に言いながら走り出した。訳もわからず立ち尽くしていると初音が駆け寄ってくる。慌てて上を見上げると、その男はニヒルな笑みを浮かべたまま私たちを見下ろしていたが、やがてひょいっと飛び降りてきた。軽々しく飛び降りてきたが、あそこは二階のはずだ。それなのに目の前の彼はなんでもないような顔をしている。
「よぉ、大丈夫か」
「大丈夫です…」
目の前に降りて来た彼を正面から見つめる。前髪が長い睫毛に掛かっていて、気だるげな雰囲気を醸し出している。人形のように完璧な美しさに目が離せない。こんなに綺麗な人生まれて初めて見た。驚いて何も言えずに彼を凝視していると、なんでもないように頷くとそのまま背を向けて歩いていってしまった。
「は、初音……」
「…びっくりした……」
そう言って初音は私の顔を見た。そして、怪我はない?と不安げに尋ねられる。
「私は大丈夫、初音こそ大丈夫?」
「うん、何ともないよ、早く帰ろっか」
「そうしよう」
いつもよりも早足で駅へ向かった。
電車に乗っても心臓が早鐘を打っていたのはきっと早歩きしたせい。そう心に言い聞かせながら初音と別れた。
どんな話をしたかもわからないまま家に帰って自分の部屋に直行する。そのままベッドに飛び乗って枕を抱え顔を埋める。心臓がドキドキとしていて、顔が熱い。彼のことが頭から離れなかった。
そう言ってニヤリと笑った途端に、男達は弾かれたように飛び退いた。私の腕を掴んでいた男も手を離す。たたらを踏んで慌てて体制を立て直す。
「五宮ってあの…!!?おい、逃げろ!!!」
早く行け、逃げろ、と男達は口々に言いながら走り出した。訳もわからず立ち尽くしていると初音が駆け寄ってくる。慌てて上を見上げると、その男はニヒルな笑みを浮かべたまま私たちを見下ろしていたが、やがてひょいっと飛び降りてきた。軽々しく飛び降りてきたが、あそこは二階のはずだ。それなのに目の前の彼はなんでもないような顔をしている。
「よぉ、大丈夫か」
「大丈夫です…」
目の前に降りて来た彼を正面から見つめる。前髪が長い睫毛に掛かっていて、気だるげな雰囲気を醸し出している。人形のように完璧な美しさに目が離せない。こんなに綺麗な人生まれて初めて見た。驚いて何も言えずに彼を凝視していると、なんでもないように頷くとそのまま背を向けて歩いていってしまった。
「は、初音……」
「…びっくりした……」
そう言って初音は私の顔を見た。そして、怪我はない?と不安げに尋ねられる。
「私は大丈夫、初音こそ大丈夫?」
「うん、何ともないよ、早く帰ろっか」
「そうしよう」
いつもよりも早足で駅へ向かった。
電車に乗っても心臓が早鐘を打っていたのはきっと早歩きしたせい。そう心に言い聞かせながら初音と別れた。
どんな話をしたかもわからないまま家に帰って自分の部屋に直行する。そのままベッドに飛び乗って枕を抱え顔を埋める。心臓がドキドキとしていて、顔が熱い。彼のことが頭から離れなかった。