最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~
「挨拶は無事終わりましたが。全く信頼されていないのが丸わかりで」
「初めて会うんですから、当たり前ですよ。信頼は今から勝ち取るものです」
「いつか信頼していただけるでしょうか? 努力はしますが、私の能力なんかたかが知れてるし……」
社長に言われた通り、経験豊富というわけではない。
入社した年は総務部で、そのあと秘書室に配属になって三年、自分なりに必死で頑張ってやっと秘書の仕事を一通り覚えたところだ。優秀すぎる社長の仕事についていけるか、自信がないのが本音。
「私に務まるのか、今から不安でいっぱいです」
そんな私の弱音を、室長は笑って聞いている。
「大丈夫ですよ、佐倉さんの仕事ぶりをよく知っている私が指名したんですから」
「ですけど」
「あなたと社長の気性はよく似ています。きっとうまくやっていけるはず」
室長は上條家の現当主である社長のお父様の秘書を務めた関係で、社長自身のこともよくご存じだ。その室長が言うんだから、とは思うけれど、あのブリザードと同じ気性と言われても納得がいかない。どこが似てるんだと反論したくなる。
社長室のプレートが掲げられたドアを開くと、手前に私の持ち場となる受付スペースがあって、その奥に本当の社長室につながる扉がある。室長はデスクに荷物を降ろすと、ぽん、と私の肩を叩いた。
「あなたと社長、いいコンビになると期待してますよ。頑張ってください」
……そうなる気は一切しませんけどね。
立ち去っていく後ろ姿を見送りながら、私はまた、心の中でため息をついた。