最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~
正彦社長の血しか受け継いでいない東吾は、上條の名を名乗れない、と。だから上條の血を尊ぶような人たちには、東吾は下に見られがちなのか。
「そして、美恵子夫人と真彦氏の間には真人君一人しか生まれなかった。……今は落ち着いたようだけど、昔の真人君はね、少し、何というか……繊細過ぎるところがあって。詳しい事情は分からないが、東吾君が引き取られたのは、そのことも無関係ではないだろう」
東吾の過去に内包する影が、一つ、また一つと形を現す。
その影は小さな棘となって、私の心にもチクチクと突き刺さる。
前田常務はもう一度社長席に目をやって、それから今度は、私の顔をじっと見つめた。
「私が、口を出すことではないかもしれないが」
言いにくそうに、でもはっきりと、目を見て告げる。
「東吾君の足元を掬おうとしている人間はたくさんいる。そういう類はくだらんことでも平気であげつらってくる。君は頭がいいからわかっているとは思うが。……中途半端なことは、しないように」
東吾の足を引っ張るようなことはするな、と。
「……ご忠告、ありがとうございます」
私には掠れた声でそれだけ言うのが精一杯だった。
常務は痛まし気な目で私を見ると、そのまま部屋を出ていった。頭を下げて見送った私は、しばらくそのまま、姿勢を戻すことができなかった。