最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~
川面に映る夕陽は、さざめく水面の波とともに、オレンジ色にゆらゆら揺れる。夕方になっても気温は下がらず、それでもビル街に吹く風とは違って、木々を揺らす風は含む熱気の質がさらっとしていた。今日も熱帯夜だろうか。
土手一面に広がる草原に寝転んで、野球ボールを必死に追いかける少年たちを眺めていた東吾の隣に座り込む。
「なんでここにいるってわかった?」
「松原さんが迎えに来てくれたから」
あいつかー、と気の抜けたように呟いて、また黙る。
しばらくそのまま、二人とも何もしゃべらずに白球の行方を追っていた。
カキン、と甲高い音がして、バットから弾かれたボールがこちらに向かって飛んできた。東吾のもとに真っすぐ向かってきたボールは、危なげなく彼の手の中に着地した。
すみませーん、と遠くからミットをつけた少年が手を振っている。東吾は立ち上がると、その少年に身振りで構えるよう合図した。少年が腰を落として捕球する姿勢を取ると、東吾が手の中のボールを一度撫でてから、すっと左足を出した。右手を大きく振りかぶると、ボールが鋭く軌跡を描いて飛んでいく。
スパン、と小気味いい音が響いて、ボールがミットの中に吸い込まれた。
見守っていた少年たちからおおー、というどよめきと、賞賛の拍手が巻き起こった。ありがとうございまーすと叫ぶ少年に手を振って、東吾が呆気に取られている私の隣に戻ってくる。