最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~

2


 一年ぶりに会うクマのぬいぐるみの花屋さんは、私たちが二人で並んで店に入ってくるのを見て、器用に片眉を上げた。

「今年こそいいご報告?」
「どうですかね。ご想像にお任せします」

 東吾の返事ににんまりと笑うと、カウンターの後ろからバケツを取り出して掲げて見せる。

「東吾くんのイメージに合いそうなリンドウ、ちょうど見つけたよ」

 薄い紫色の花がついたリンドウが、バケツの中から顔を出していた。野生に群生しているのに近い、小ぶりな花だ。

「そうそう、こんな感じです」
「でしょー」

 得意そうなクマさんは早速一本取り出して、じっくりと眺める。

「今年は東吾くんも一緒に選ぼうよ」
「いや、俺花のこと知らないし」
「でも東吾くんにしかお母さんの好みわかんないしさ」

 早々に逃げ出そうとしていた東吾に先制して声をかけ、ね、と私に同意を求めてくる。そうですね、と私も頷くと、東吾は不承不承といった感じでその場に残った。
 東吾が直感で選んでいく花を、クマさんが組み合わせていって、時折私の意見も求める。薄紫のリンドウに赤いケイトウやピンクのトルコギキキョウをあしらった花束は、去年よりもかわいらしい雰囲気に仕上がった。

 帰り際、クマさんがそっと私だけに耳打ちする。

「結婚式のブーケ、僕に作らせてよ」

 私は笑って答えた。

「その時はよろしくお願いします」
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