最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~
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忙しなく過ごす時間は本当に早く流れて、最後の勤務の日はあっという間にやってきた。
私を見送るために集まってくれた秘書課一同は、結局エントランスまでついて来てくれた。それを見て私に気付いてくれた人たちが集まってくれて、次々と労いの言葉をかけてくれる。最後には常務まで駆けつけてくれて、更に賑やかな集団になった。
「皆さん、今まで大変お世話になりました」
最後に深々と頭を下げると、お疲れ様、元気でね、と温かい声が降ってくる。
「私たちは明日の送別会で」
「最後に騒ぎまくるわよー」
有難いことに、送別会まで企画してもらった。秘書課の面々とは、それが最後のお別れになる。
「佐倉君ならどこへ行っても活躍できるだろう。頑張って」
常務の身に余るお言葉を合図に、その場はお開きとなった。歩き出す私にみんなずっと手を振ってくれて、私は何度も振り返りながら、みんなの姿が見えなくなるまで歩いた。
ビルの全景が見渡せる位置までくると、改めて立ち止まる。
この会社に入って六年弱、いろんなことを学ばせてもらった。人間関係で悩んだことはほぼなくて、それが今の時代どれだけ凄いことか、周りの友人たちの話を聞くたびに痛感する。
社長室があるはずの場所を見上げた。遠すぎて全然わからなかったけど、なんだか東吾が見送ってくれているような気がして。
この会社で働く全ての人たちに、最大級の感謝を。
あるだけのありがとうの気持ちを込めて、また深く、礼をした。