最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~
「何言ってんのお前?」
「真彦さまが何をおっしゃったのかは知りませんが、全て本心だと思いますよ」
人の話を聞いているのかいないのか、松原は一人で話し続ける。
「真彦さまと美恵子さまの婚約の話が出た時、真彦さまはお断りするつもりだったそうです。でも先に美園さんが身を引いた。真彦さまの優秀さは当時からずば抜けていましたから、そうするのが当然だと思ったと言っていました。東吾さまを身籠っているとわかったのはその後。でも、連絡する気は一切なかったそうです。もう真彦さまとは関係ない、この子は一人で育てる、と」
俺の隣に並んで、墓石に向かって懐かしそうに目を細める。
「真彦さまが東吾さまの存在を知ったのは本当に偶然だったそうです。すぐに認知を申し出たけれど、美園さんは倒れるまでそれを拒否した。だけど自分の余命を知って、あなたを真彦さまに託した。……本当は、ほっとした、と言っていました。これ以上ない後見を手に入れて、肩の荷が下りたんでしょうね」
すっと手を合わせると、しばらく黙って目を閉じる。その姿を見ながら、俺は今語られていることを理解しようと必死だった。
父は母さんを捨てたわけじゃなかった。父は、俺という存在がこの世に生まれてきたことを、知らなかった。