最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~
――ザク、ザク、ザク。
私の名前を呼ぶ声が、蘇る。
里香。
その声はいつだって、優しい甘さが伴っていた。離れてからもう随分経つのに、意識の合間をすり抜けて私に呼びかけてくる。
里香。
ねえ、私はもう忘れたいの。もうそんなふうに呼ぶのはやめて。
「里香」
うるさいな、もう!
また聞こえてきた声に向かって、腹立ち紛れに掬った雪を放り投げた。呼ばないでって言ってるでしょ!
「つっめてっ」
――ん?
いつもの声とは違った声がした。何かがおかしいと思って顔を上げると、目の前に雪を被った東吾がいた。
驚きのあまりぽかんと固まる。幻聴だけじゃなくついに幻覚まで見え始めたか。
「いきなり雪ぶっかけるとか、いくら何でもひどくないか……」
幻覚がぼそりと呟いて、仏頂面で頭に付いた雪を払っている。……ってこれ幻覚じゃないよね!?