最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~
皮肉を言いながらも息遣いがどんどん苦しそうに変わっていく。少しでもゆったりと座ってもらおうとぎりぎりまで窓に寄った。
「社長、もう少しこちらに……ってええっ」
空いたスペースをちらりと見やると、社長がいきなりこちらに倒れこんできた。ふわりと掠めた柑橘系の香りに、どきっとする。
「何をっ……」
「膝貸せ」
勝手に私の膝に頭を乗せて目を閉じる、その苦しそうな横顔を見たら文句を言えなかった。
それでもあり得ない場所に社長のきれいな顔があって、一気に緊張した。
男の人に膝枕なんて初めての経験で、どうしていいかわからず硬直する。手をどこに置いていいか迷ってさまよわせていると、その様子を薄目で見た社長が、いきなり掴んで自分の額に当てた。
「っっ」
不意うちでそんなことしないで欲しい。
カッと血が上って、社長の額と同じくらい顔が熱い。落ち着け相手は病人だ、と、必死で自分に言い聞かせる。そうそう、弟が病気になった時に、姉ちゃんの手冷てーから気持ちいー、とか言ってた、あれと同じノリよ、きっと。
これは弟だと思いながら試しに髪を撫でて見ると、ふと社長の表情が緩んだ。どうやらお気に召したらしい。それでも苦しそうなのは変わりなく、私はひたすら緊張しながら、そのまま髪を撫で続けた。