最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~

 社長の家は明るい雰囲気の2LDKの低層マンションだった。
 オートロックにコンシェルジュ付き、規模は小さいけれど一つの階に二部屋しかないようで、それぞれの部屋の間取りはゆったりしている。
 ぐったりしている社長を支えて、車からは松原さんが、エントランスからはコンシェルジュの人がそれぞれ手を貸してくれて、なんとか部屋までたどり着いた。

「社長、寝室どこですか、寝室」
「入って右の二番目」

 最終的には私一人で支える羽目になり、ようやくベッドに辿り着くと、半分投げ出すように社長を降ろした。重くて潰れるかと思った。

「社長、お台所をお借りしても……」

 一息ついて社長を見ると、億劫そうにワイシャツのボタンを外していた。

「うわっ、何脱いでるんですか!」
「このまま寝ろとでも言うつもりか。なに見てるんだ痴女。キッチンなら勝手に使え」

 言ってることはごもっともだけどせめて私が出て行ってからにしてほしいと思いつつ、慌てて寝室を出る。松原さんに頼んで途中で寄ってもらったスーパーで買った食材を手に、キッチンに向かった。料理は得意というわけではないけれど、まあ人並みにはできる方だ。

 広いキッチンには調理道具や調味料が揃っていて、使われている形跡があった。勝手に社長は料理などしないだろうと決めつけていたけれど、意外と家庭的らしい。経済誌や新聞などは出しっぱなしだけど部屋もきれいに片付いているので、普段から家事はするのかもしれない。いやでも、あれだけ忙しい人だし、ハウスキーパーにでも頼んでいると考える方が無難だろうか。
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