最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~
卵粥を作り薬と共に持っていくと、スウェットとTシャツに着替えた社長はいかにも上質そうな布団の中で荒い息をついていた。眉間にしわを寄せて、閉じた目元は険しい。
「お粥を作ったんですが、食べられそうですか?」
サイドチェストにお盆を置いて、枕もとに座り込む。
「少しでも何か食べて、薬を飲まないと」
薄く目を開けて私の姿を確認した社長は、束の間考えて、短く、食う、と言った。
ゆっくりと上半身を起こすのを手伝って、背中に枕をあてがうとだいぶん姿勢が楽そうなので、そのままお盆を渡す。少し口にいれて味を確かめるようにゆっくり噛みしめ、飲み込む。次の一口は早かったので、どうやら味はお気に召したようだ。
最後まできれいに食べきって、薬をきちんと飲むまで確認してから、器を持って部屋を出る。キッチンを手早く片付けてからそっと寝室を窺うと、薬が効いてきたのか、先ほどよりは楽そうに眠っていた。その様子にひとまず安心して、リビングに戻って室長に簡単に報告を済ませると、すぐに手持ち無沙汰になってしまう。
インスタントのコーヒーを拝借して勝手に淹れると、カップを持ってこれまた勝手にベランダに出た。
広がる景色は意外にものどかなもので、大きな川の両側に緑の木々が生い茂り、広い河原では少年たちが野球に興じている。勝手に高層階の一角でキラキラしい夜景を眺めながらウイスキーでも舐めてるんだろうと想像していたから、なんだか好感が持てた。キッチンに並んでいたアルコールはビールと焼酎だったし。