最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~
「話がしたいな」
ごちそうさん、と湯飲みをこちらに寄越して、どさりと椅子に座り込む。
「もっと若い連中と。現場の声を、忌憚のない意見を、気負いのない方法で」
人の配置を変えて、社内の流れを刷新することが、第一優先の課題になるだろう。そしてそこには必ず反発が伴う。就任したばかりの若い社長のもとには、圧倒的に味方が少ない。
いかに効率よく、少しでも抵抗の少ないように変えていけるか。それにはまずは情報を集めるしかない。それでも、上層部を飛び越えて社長が直接現場の人間と忌憚のない意見を交わす、というのは、うちくらいの規模になると中々難しい。実際そういう場を設けようとしたこともあったけど、上の人間の面子だとか横やりだとかに邪魔されて、実現しなかった。
「……非公式に、であれば」
初めて意見を聞かれたことに勇気づけられて、ずっと思っていたことを口にしてみた。
社長は顔を上げて、ん? と目線で促す。
「プライベートな場であれば、話をしてみると面白いかも、と思える人がいます」
「社長の俺がいきなり呼び出して、あけすけな話ができるか?」
「酔わせれば」
いい頃合いまで飲ませてから、不意うちで社長に合わせれば、あいつなら開き直ってぺらぺら話し出すかもしれない。
「お前もなかなか腹黒いな」
私の提案を面白そうに聞いていた社長は、いいだろう、と頷いた。
「セッティングしてくれ。お前の判断に従おう」