最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~
その辺りからだった。徐々に実のある意見が集まりだしてきたのは。
どうやら本当に社長まで話が通るみたいだぞ、と少しずつ信用されてきたらしく、私向けではなく社長に対する意見がちらほらと混ざり始めたのだ。私としては確実にあの自販機の存在が大きいと思っている。一秘書の意見ではあの高級自販機は導入できない。
これはと思う意見の持ち主に、内々に面談のアポを取り付ける。会う場所は社外を選んだ。これは非公式であり、あくまで個人的に意見を聞くだけで形には残りませんよ、という事実を強調するためだ。
最初は本当に社長が来るのかと猜疑心満載でやってくるけど、本物が姿を現すと、みんな一様にテンションが上がる。感動して喋りまくる人もいれば、驚き過ぎて泣き出した人もいた。その誰もに社長は紳士的に接し、丁寧に話を聞いていく。
そんなことを繰り返していくうちに、私の仕事量は爆発的に膨れ上がっていった。
ガチャリと社長室の扉が開いて、社長が半分だけ体を出す。
「佐倉さん、これまとめといて」
見ると目線は手元の書類を見ながら、別の書類を片手だけで差し出していた。受け取ると、そのままの体勢で扉の向こうに消えていく。
しばらくして、社長の決済が必要な書類が出来上がったので、おざなりに扉をノックしてすぐに部屋に入る。
「社長、ご確認を」
「ああ」
またしても社長は手元を見たままだけど、こっちもそんなの気にしちゃいない。最低限の会話で部屋を出ていく。