最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~
時間になったので上條ケミカル本社に出向き、グループ会議に出席する。ほぼ定期報告のみのいつも通りの内容で、なぜ今日私が連れてこられたのか、いまいち釈然としなかったけど。
車に戻って、松原さんが社に戻ろうとするのを、社長が止めた。
「いい。そのまま向かえ」
その言葉に、いつもあまり表情を変えない松原さんが、驚いたように振り向いた。
「失礼ですが。佐倉さんは」
「連れていく」
は、と答えた松原さんは、衝撃を受けたように目を見開いている。それでもすぐに気を取り直して、車を発進させた。
さあ、私は一体どこへ連れていかれるのでしょう?
恐る恐る社長の顔を窺うと、肘をついて私の様子を見ていた社長は、苦笑いを浮かべていた。
「ちょっとした私用に付き合ってもらえないか? 時間は取らせない」
「私用、とは?」
「着いたらわかるよ」
できれば先に教えて欲しいのですが。
それきり社長は黙ってしまったので、喉元まで出かかった言葉を飲み込んで、落ち着かない気持ちで窓の外を眺める。車はどんどん郊外へ向かっていくようだった。
しばらくして、一軒の花屋の前で車が止まる。
「一緒に降りて」
社長が松原さんを残しさっと降りてしまったので、私も慌てて後を追う。
慣れた様子で社長が店内に入ると、中にいた大柄な男の人がすぐに気付いて声をかけてきた。
「いらっしゃい」
「どうも」
後ろに控えた私に目を向けると、にやりと笑う。
「なに。今年はもしかしていい報告でも?」
「違いますよ。ただの部下です」
「なんだ、つまんない」