最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~
顔見知りだろうか、気安い雰囲気だ。白いエプロンが所々汚れていて、いかにも気のよさそうな、クマのぬいぐるみみたいな人。
「今年もお任せ?」
ざっと店内を見渡しながらその男性が尋ねると、社長は私のほうを見た。
「さっきの花、なんていう名前だ? あの紫色の」
「リンドウ、ですか?」
「リンドウね、今日は入荷あったかな」
男性が呟きながら、店の裏手のほうへ回っていった。いいのあったよ、とすぐに戻ってきた彼が手にしていたのは、濃い青紫色の、大ぶりのリンドウの花。
きれいだな、と思ったけど、社長は少し違う目線で見たようだ。
「紫じゃないんですね。青?」
「うん? リンドウもいろんな色があるよ、ピンクとか白とか。もっと薄い紫もあるけど、一般的なのはこの色かなあ」
「だからか。俺の中ではもっと紫色のイメージだったんです。サイズももっと小さくて」
「ああ、もしかして、ずっと探してた花のこと? リンドウだったんだ」
「おそらく。もう記憶も曖昧ですが」
私が昼間買ってきたリンドウは、確かにもっと薄めの紫色で、形も小ぶりだった。小さなアレンジにするのにちょうどいいな、と思っただけなんだけど。
「他には何を合わせようか?」
その男性の問いに、社長は私の方を向くと、こともなげに言った。
「お前、決めてくれないか? 花に詳しそうだし」
「は? しかし、用途を教えてくれませんと。贈られる方のご趣味も存じませんし」
「派手なのより地味なのが好きだったな。あとでかいのより小さいの」
「随分大雑把な説明ですね」
「お前の趣味で選んでいいよ。信用してるから」