最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~

 大混乱の渦に飲み込まれて、しばらくそのまま動けなかった。内線がかかってきたのに助けられてなんとか立ち上がったけど、頭の中はずっとパニック状態で。

 社長室にいたら叫びだしてしまいそうで秘書室に顔を出すけれど、ことあるごとにキスの感触がよみがえって一人挙動不審になる。コピー機を詰まらせて、いつもは簡単に直るのに今日はなぜか言うことを聞いてくれなくて、茉奈ちゃんを呼びにいく羽目になる。

「先輩、今日は流石にそわそわしてますね」
「うん。もう、すごい落ち着かない」

 ですよねー、と頷いているけれど、その理由は多分茉奈ちゃんが想像しているものじゃない。社長にキスされたなんて、口が裂けても言えないけれど。

 そのそわそわは結局丸一日続いて、ほとんど仕事にならなかった。それでも、社長が会議から戻られたという知らせに、自然と気が引き締まる。

 社長室で待っていると、特に普段と変わらない様子で社長が入ってきた。ほんとにいつも通りで、表情からはうまくいったのかどうなのかわからない。

「おかえりなさいませ」
「ただいま」

 出迎えた私にコートを脱いで渡すと、椅子に沈み込むように腰掛ける。そして、無言で言葉を待つ私に、にやりと笑いかけた。

「首尾は上々。まあ多少の横やりはあったけど、大筋は全部承認させた」

 ほっとして肩の力が抜けた私を見て、社長は表情を引き締める。

「ここからが正念場だぞ。年始から本格的に動き出す。いままでより更に忙しくなる、気合入れていくぞ」
「はい!」
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