最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~

2


「先輩、最近いいことありました?」

 届け物をしてくれた茉奈ちゃんが、ひょいと私の顔を覗き込む。

「なんかウキウキしてるっていうか。肌もつやつやだし」

 浮ついているのがわかりますか。高級パック買っちゃったしね。

「仕事が落ち着いたからじゃない? ちゃんと休めてるし」
「まあ、一時期殺人的に忙しそうでしたからねえ」

 よかったですねえ、とちょっと同情的な目線になる茉奈ちゃんに、心の中で謝った。
 いえいえ、浮ついてるのは事実なんです、主にピンク色な意味で。

 社長に予定を聞かれた日から、私の頭の中は半分ふわっふわだ。仕事が落ち着いたのをいいことに、スキンケアに精を出し、普段は適当な料理も野菜多めのヘルシー志向にシフトする。前々日にはネイル、前日にはエステのフルコースまで張り切って予約してしまった。下着を新調すべきかとカタログを眺め始めた時点で、ちょっと待て待てとさすがに自分でストップをかけたけど。

 読めないのは社長だ。
 あの日からさっぱりその話題は口に出さず、いつも通り普通に仕事している。まあ変に態度を変えられても困るのだけど、どんな考えで二十四日なんて日に食事に誘ってきたのか、さっぱり意図が読めない。

 女性として誘ってもらえたのか、それとも一緒に戦った相棒としてか。祝杯を上げるってことは、相棒の意味合いのほうが強いか? ただ単に二十四日が空いていただけなのか、もしかして二十四日という日が一般的にクリスマスイブと呼ばれる特別な日だということを、社長は認識していないのでは……?

 わからない。全くもってわからない。
< 54 / 175 >

この作品をシェア

pagetop