最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~
「ちょっと、なにを怒ってんだよ。俺なんかしたか?」
「ご自分の胸に手を当ててお考えになられては」
「途中まですごい楽しそうだったろうが」
「大変楽しませてもらいました。本日かかった経費は全てお支払いしますので、後日ご請求ください」
「そんな話してないだろ。何が不満だ? 女ってこういうのが好きなんだろ?」

 聞き捨てならないセリフを吐いた。すぐ真後ろから話かけてきていた社長に向き直ると、背伸びをして睨みつける。

「社長はなんにもわかってない。女っていう一つのカテゴリーでくくらないでください。社長の火遊びの相手と一緒にしないで」
「火遊びって……」
「生憎私はガキなんです。好きっていう気持ちが何より重要なんです」

 話している間にどんどん気持ちが昂って、涙が零れそうになる。


「割り切った関係とか無理なんです。私は、私はっ」


 見た目で持たれる印象とは違って、大人のお姉さんにはなれない。
 青臭いと笑われても、愛情のない関係は嫌だ。


「好きな人に好きになって欲しいんですっ……」


 ぽろりと涙が伝うのがわかって咄嗟に顔を背けた。
 そのまま立ち去ろうとした私の手を社長が掴もうとして、思いっきり振りほどく。

「待てって」
「触らないで!」

 なおも引き寄せようとする社長に抗って身を捩ると、ちょっとした揉み合いになって、無理やり抜け出そうとしたらよろめいて体が傾ぐ。
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