最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~

 真新しいミュウミュウが、一番端、正面に当たる大きな噴水の淵の縁石にひっかかった。バランスが保てずに水面が近づいてくる。

 まずい、落ちる……。

 思わず目を閉じた私を、社長がぐいっと引っ張った。待っていたのは水の冷たさではなくお尻から地面に衝突する痛みで、だけど同時にばっしゃーんと派手に水が跳ねる音がして。

 恐る恐る目を開けると、縁石の外に投げ出された私と同じ目線で、噴水の中で膝を立てて座り込む社長がいた。

「しゃ、社長、大丈夫ですか?」

 流石に真っ青になって、慌てて縁石の上に歩み寄る。社長は瞬きもせずこちらを見ていた。
 ひいっ、これは本気で怒らせた?


「すみませ……」

「俺は今まで女に好きだなんて言ったことがない」


 は、といきなりのゲス発言が飛び出して、差し出そうとした手の動きが止まる。こんな格好でいきなり何を言い出すのか。


「というより誰かを好きだと思ったことがないのかもしれない。好きという言葉の定義がいまいちわからん」


 社長は至って真剣だ。自分の中の考えをちゃんと言葉に紡ごうと、必死に考えているように見える。


「女を抱きたいと思えば声をかければついてきたし。あっちもちやほやしとけば満足そうだったし」

「最低です、社長……」

「恋愛関係なんてそんなもんなんだろうと思ってたけど」


 社長の視線が真っすぐに、私の視線を捉えた。その痛いほど真摯なまなざしから、目が逸らせない。
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