最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~
令嬢の襲来
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少年たちの歓声に混ざって、カキーンとバッドがボールを見事捉える音が、風に乗って聞こえてくる。
もこもこのニットカーデに包まり、ベランダでビールを傾けていると、リビングの窓が開いてふわりと暖気が流れてきた。
うわ、さっみー、と呟きながら、こちらもラフなニットに身を包んだ東吾もビール片手に隣に並ぶ。
「こんな寒いのによくやるよなあ。子供は風の子っていうけど」
「若いってすごいよねえ。元気をもらえるっていうか」
「立派なおばさんの発言だな」
「うるさーい」
ふざけて軽く足を蹴ると、お返しにヘッドロックをくらった。ギブギブと腕を叩くと、笑いながら腕を解いて、ついでに額を軽く唇が掠めていく。
今日は丸一日時間が空いたので、久しぶりに思いっきり怠惰に過ごそうと、東吾の部屋に籠っていた。新年度に向けてまたストレスフルな生活が始まったので、休める時には休もうというのが二人の共通の意見。
東吾の家は日当たりがよくて、リビングでごろごろするのは最高に気持ちよかった。適当なDVDを流しながら、朝っぱらからビールを空け、時折ソファの上で戯れ合う。
簡単にサンドイッチを摘まんで昼食を摂ると、ここ最近にしては珍しくあまりに天気がいいものだから、散歩がてら近所のスーパーに買い出しに出掛けることにした。今日の夕飯は、私がお取り寄せしたよせ鍋を、二人で作る予定。
東吾は車も持っているけど、遠出する時くらいしか使わない。本人曰く、都会の渋滞した道は運転してるとイライラするそうで、だったら電車で移動すると言い出して周りに止められ、結局プライベートでも車が必要になれば松原さんがやってくるようになったそうだ。