最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~

 その後、私と東吾が付き合っていることは、自然と公然の秘密となった。どこまで広がっているのかわからないけど、なんとなく、開発とか営業の一部にもバレている気がする。しかもみんな、別に驚くこともなく、まるで最初から知ってたみたいに受け入れていた。

「里香さんと一緒にいる時の社長の態度見てたら、なんとなくわかりますって」

 エスプレッソのカップを持った茉奈ちゃんが、したり顔で隣に座る。

「里香さんと一緒だとリラックスしてるし、たまにやっさしー目で里香さんのこと見てるし。社長、最初はすっごい怖かったけど、里香さんと同じ部屋で仕事するようになったくらいから、どんどん雰囲気柔らかくなっていったじゃないですか。今じゃ別人ですよ。素っ気ないけど睨んでこないもん」

 まだそのレベルなのね、とちょっと笑ってしまった。
 社長の顔の東吾は相変わらず不愛想だ。本人の気質もあるけど、他の重役たちに下に見られないように、意図的に高圧的にしてる部分も、多分にあると思う。

「付き合ってるって知っても、みんな好意的ですよ。社長も里香さんも仕事中は馬車馬みたいに働いてるの知ってますし。一緒の部屋でも、別に乳繰り合ってるわけでもなし……ないですよね?」
「ないです、絶対ないです」

 その言葉選びは女の子としてどうなのか、と思ったけど、口には出さないでおいた。茉奈ちゃんはたまに、何故か昭和の匂いがする。

 まあ、そんな感じで周囲は前向きに受け止めてくれているし、吹聴して回るような人間もいなかったので、今のところ問題にはなっていない。そんなところへの、今回のご令嬢のご訪問。秘書課の面々の意外とミーハーな好奇心に火がついてしまったようで。

「秘書課一同、里香さんを全面バックアップしますから。頑張ってくださいね。ね!」

 有難いのかどうなのか、なんだか頭が痛いような気がしてくるのだった。
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