最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~
それから雅さんは、一人で東吾に会いに来るようになった。しかもうまいこと理由をつけて、うざったくないギリギリの頻度で。
たまにお父様を伴うこともあり、相手が相手なので粗雑に扱うこともできず、東吾もできる限り対応している。
面会のスケジュールを組む私は、その度に胃の中に石を押し込まれたような、キリキリとした気分を味わう。
久しぶりに東吾の休みが取れた日。
たまには外でデートでも、ということで、二人で映画を見に行った。スカッとするかと思ってアクションものを選んだけど、なんだかストーリーに身が入らず、お昼を食べに行っても、大好物の鰻重なのにテンションが上がらずで、結局早々に東吾の部屋に帰ってきてしまった。
ぼーっとしてしまう私を気遣って、東吾がコーヒーを淹れてくれた。この重だるいようなすっきりしない気分は、きっと生理が近いせいだと思いたい。
柔らかいソファに沈み込んで、カップを受け取る。なんだか申し訳なくなって、自然と謝罪の言葉が漏れた。
「ごめん」
「何が」
「折角のお休みが台無し」
「台無しなんてことはないだろ。のんびりしろって神様が言ってんだよ」
隣に座った東吾の肩にもたれて、ゆっくりとコーヒーを飲んでいると、ようやく心が緩んできたような気がした。
お揃いで買ったそのカップは、焼きっぱなしの陶器のぽってりとした質感が、手にしっくり馴染む。
東吾の手が、私を胸に引き寄せて、肩を撫でた。
「ごめんな」
「何が」
「雅さんのこと」
「仕方ないよ。梶浦頭取には気に入られてた方がいい」