最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~
一個全部食べ切って、チューハイで口の中の油を流し込むと、ようやく一息ついた。べとつく手をレジのおばちゃんが大量に入れてくれたおしぼりで拭って、今度はチーズ鱈の袋を開ける。ちびちびと齧りながらチューハイを飲んでいると、心の中で渦巻いていた苛立ちが落ち着いていくのを感じる。
誰もいない湖は本当に静かで、離れた場所で遊ぶ子供たちの声だけが聞こえてくる。
日中は早くも夏を感じさせる太陽は、赤く染まって落ちかけていくこのくらいの時間でも、ぬるりとした暑気を体にまとわせる。それでも、遊歩道には木が鬱蒼と生い茂っていて、ひんやりとした影を落としていた。
汗ばんでいた腕を風が撫でていく。少し肌寒さを感じて二の腕を撫でていると、後ろから呆れたような声が聞こえた。
「花見には遅すぎるんじゃねえの」
わざとらしくどかっと勢いをつけてベンチに座ると、置いてあったコンビニの袋を勝手に漁って、ビールの缶を開ける。
「あら真木くん。どうしてこんなところに?」
「どっかの強引なお姉さんに呼び出されたからですね」
いきなり、しかも場所だけ送って呼びつけたので、もしかしたら来ないかもしれないと思っていた。少なくとも、こんな早く駆けつけてきてくれるとは。
「あんたまた彼女いないの?」
「お前ね。わざわざ来てやった人間に言うことか、それ」
あ、おでんだ、と嬉しそうに容器を出して、蓋の上で卵を割り始める。